2024年8月21日
何らかの理由(むし歯、歯周病、歯根破折、外傷など)で歯を失った場合、人工歯を装着して、咬み合わせや発音、審美性を回復させる治療のことを、医学的には欠損補綴(けっそんほてつ)と言います。
欠損補綴には、ブリッジ、入れ歯、そしてインプラントがあります。
歯を失うことによって起こる様々な変化の中で、重要なのに軽視されがちな変化は「咬み合わせの変化」と「力のバランスの変化」です。
奥歯を抜歯された場合は勿論ですが、1本の歯の詰物が取れたとたんに食事が困難になります。
ところが、人間が持つ優れた適応能力により、数日もすれば問題の無い歯の側で何とか食べることができるようになります。
でも実は、この適応能力が「諸刃の剣」でもあります。
咬みにくい側から咬みやすい側への顎の移動が長期化すると、顎を動かす筋肉の活動量と神経伝達のバランスに歪が生じます。
特に、中間の歯ではなく最後方の奥歯を失った場合の歪は大きく、そして、欠損補綴の手段は入れ歯か
インプラントの2種類となります。入れ歯は、見た目や異物感、手入れの煩わしさの他に決定的な問題点を抱えています。
それは、柔らかい粘膜の上に載せた人工歯を金属のバネで残った歯に引っ掛けて留める点です。
口を閉じて上下の歯が咬み合った瞬間、残っている天然歯と粘膜上の人工歯では沈み込む量が大きく異なります。
因みに、歯の沈み込み量が数十ミクロンであるのに対し、粘膜の沈み込み量は数百ミクロンと一桁違う数値で、この違いが様々な不具合を引き起こすことになります。
今回、左右の奥歯が大きく動いて咬むことができない患者様が来院されました。
放置期間が長かったため、既に奥歯を支える骨が大きく失われていました。
入れ歯による治療では、適正な咬み合わせと残った天然歯を長期に維持することが困難と判断し、骨再生治療を併用したインプラント治療を行いました。
当院の前の歯科医院では入れ歯治療以外は不可能と言われたらしく、「患者様の人生を変える」手助けになれたことを嬉しく思っています。今後も、「咬み合わせと力のバランス」に留意し、口の中全体に気を配った長期に安定した治療を目指していきたいと考えています。