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歯のコラム

2024年8月28日

上顎奥歯の抜歯後にインプラントを行う場合、上顎洞という空洞が問題となります。

上顎洞は鼻の左右に隣接した空洞(副鼻腔)のことで、「頭の軽量化」、「声の共鳴」、「吸気の清浄と加湿」「脳の冷却」などの働きがあり、蓄膿症は上顎洞が感染した状態を指します。

上顎洞の大きさには個人差があり、同じ人でも歯の部位によって違います。また、抜歯後は吸気圧の影響で拡大する傾向にあります。

さらに、歯根周囲の感染(歯周病や歯根破折)により骨が吸収している場合は、抜歯する前から歯根と上顎洞がつながっていることも珍しくありません。

GBRと上顎洞底挙上術の活用

以前の当院ブログで紹介したGBR(Guided Bone Regeneration)は、失われた骨を再生する治療法ですが、この方法を上顎洞に応用したのが上顎洞底挙上術です。

上顎洞内の粘膜を骨面から慎重に剥離し、粘膜と骨面の間にできた隙間に骨を再生させる治療法です。

ただ、実際には上顎洞底挙上術の歴史は古く、この、閉鎖された空間に骨を誘導する原理を基に遮断膜を応用したGBRが考案されたという経緯があります。

臨床例:GBRと上顎洞底挙上術を併用したインプラント治療

大臼歯の抜歯後にインプラント行う場合、粘膜挙上量は様々ですが、上顎洞へのアプローチが必要なケースが大半です。

逆に言えば、上顎洞にアプローチできる歯科医であれば、大半のケースでインプラントが可能となります。

今回、左上の第一大臼歯に歯根破折が生じ、感染による腫れと痛みで咬むことができない患者様が来院されました。

放置期間が長かったため既に歯を支える骨が大きく失われ、上顎洞と歯根がつながった重度の状態でした。

「健全な第二大臼歯を削りたくない」という患者様の強い希望と、強い咬合力がブリッジに及ぼす影響を考慮し、GBRと上顎洞底挙上術を併用したインプラント治療を行いました。

初診時にエックス線CT画像で状況を説明した際、予想以上の厳しい状況に接し、患者様はショックを受けられていました。

決して容易な症例ではなく、術者として最大限の緊張感を持って手術に臨みました。

インプラント治療が無事に成功した際の患者様の安堵した表情に接し、主治医として自分のことのように嬉しく思っています。

GBRと上顎洞底挙上術を併用したインプラント治療の術前写真

GBRと上顎洞底挙上術を併用したインプラント治療の術前写真

GBRと上顎洞底挙上術を併用したインプラント治療の術後写真

GBRと上顎洞底挙上術を併用したインプラント治療の術後写真

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